話題のジブリ映画、見に行ってきました。
これほどまでに見る人によって評価の分かれる作品は久々でした。

私はどちらかというと批判的です。

いつもは適当に感想を垂れ流していますが、今回「創作者として、女として、腐女子として」の三本の柱に沿って、ゆるく時に激しく語っていこうと思います。



【創作者として】


全編を通してマニアによるマニアに向けた映画でした。
子供向け映画では断じてない。

宮崎駿も死期が近いのか(失礼)、作りたいものを作った感じ。
分かられようと思ってないから、大人(私)にも難しいものでした。

没頭型の天才・二郎より、努力型の本庄の方が身近で好き。
でも、世に台頭するのは二郎みたいな人間ですよ。解せぬ。

堀越二郎の情熱は一直線って感じですね。
でも、熱くないの。静かなる情熱。こういうタイプが一番怖い。

鯖の骨の曲線の美しさにずっとこだわってたなー。
ああいうこだわりと情熱を持った人間しか、創作者として成功しないのかもなと思わされましたね(穿った見方)。

けれど、二郎の創作人生は、試合に勝って勝負に負けた感じでしたね。
美しい飛行機は出来たけれど、見て欲しかった人はいないし。
菜穂子を犠牲にゼロ戦を召喚した結果、デュエルに負けた感じ。

あははザマーミロ負け犬ーと揶揄するのは簡単ですが、もしかしたらラストのあの姿は30年後の私かもしれないから恐ろしい。
何かを作っている以上、あんな風になる可能性はゼロじゃないかなーなんて。

作中のカプローニが、「飛行機に乗れなくても作ることはできる(意訳)」って感じのことを言ってた気がするんですけど、道は一つじゃないなんて外野から見たら当たり前のことなんですよね。
でも、それに本人は気づかなかったりする。
好きでいるということに、関わりたいと思う気持ちに優劣はないんじゃないかと励まされました。

他にもカプローニは「創造的人生の持ち時間は10年。君の10年を力を尽くして生きなさい」と言ってたんですが、これには落ち込みました。

言いたいことの趣旨は分かりますが、宮崎駿がそれを言うのかって気がしますね。
宮崎駿自身の持ち時間はどうなんでしょう。

「僕の時間は終わっちゃったけどね。君は頑張れ」も嫌だし、
「僕の時間は10年じゃないけどね。凡人と一緒にするなよ。てへぺろ」だったらいっそ殺意が沸く。

人間、トシをとると説教臭くなって嫌ですね。
悔いのないように作れってことなのでしょうが、うーんって感じ。

ワシは今何年目にいるだろうか。そもそもスタートすらしてないのか。
私気になります!



【女として】


終野はお互いに尊敬のない恋愛が嫌いなんですけど、これはまさにそのパターンでしたね。
菜穂子は二郎のことを尊敬しているけれど、二郎は見た限りでは感じられなかったなー。

愛玩とか、執着は感じられたけど、対等な人間として尊重されているとはどうも思えなかった。
お気に入りのペットって感じ。
菜穂子のシーン全部ゴールデンレトリバーにしても違和感ないんじゃないかな。

菜穂子に対して気遣うそぶりもあったけど、それは他の人への態度と比べるとマシなだけで、一般的な感覚から言ったらもうちょっと気利かせなきゃ振られると思うんですけどね。

ああでも、現実にも二郎みたいな人物っているんですよ。
なんていうか、対象物以外見えてなくて、誰に対しても平等な人。

けれど、恋愛はそれじゃ駄目なはずだよなー。

菜穂子が自分の死期を悟って姿を消してしまうところだって(余談ですけど猫っぽい)相手の意思を尊重しているから追いかけないんじゃないんですよ。
二郎は興味がないんです。

だから追いかけないし、約束は守らないし、話も聞いてない。
典型的駄目な男です。

誰かが言ってた『鬼畜眼鏡』という評価は妥当ですね。
「菜穂子さんあなた、この人のどこが好きね?」と田舎のおばちゃんよろしく聞きたい気分です。

映画のラストもいい話風になっていますが、私は首を傾げましたね。
二郎の妄想の中の菜穂子は「生きて」って言ってますけど、うーん。

男による男の願望映画かなって。
(これはちょっと乱暴かもしれない)

だって、妹も菜穂子も「都合のよい女」って印象を受けるんですよ。

そもそもいい所のお嬢さんがあんな年齢まで結婚してないなんてことありえるのか。
病気にはかかってるけど年頃の娘なんだから、家のために結婚させられたりしないのかなー。
菜穂子の父は菜穂子>家なのか。いい人? いや、彼は始終いい人だったけどさ。

この登場人物全員イイコちゃんな中、二郎のひどさが目立ったなー。
創作者としてはいいかもしれないけど、人間としてはもうホント駄目。

作ったものは完成はしたが、一機も帰ってこない。妻には先立たれる。
字面だけ見ると相当かっこ悪い。

でも、菜穂子はそういうところも愛しちゃったんだよね。
マジで業。恋愛は業。

人間を一番にできない人に恋をした不幸。
もしかしたら幸福かもしれないけど。

ユーミンも歌ってる「ほかの人にはわからない」「ただ思うだけ けれどしあわせ」ってね。
菜穂子はあれでも幸せだったのかもしれない。

見てるこっちは胃がキリキリするけど。

思ったよりは恋愛してたんですが、恋愛映画だと思って見に行くとがっかりするかもしれない。
いや、感動してる人もいるのか。世界は広い。

実在した人物に言及するのは嫌なのですが、彼のモデルになってる堀辰雄は、
映画でいう「菜穂子」が死んだ後、他の女の人をお嫁さんにしてるんですよね。

パンフレットに書いてあったのですが、見た瞬間、「ああ男の人って」と呆れましたね。
いつまでも引きずっていろとは言わないけど、没後三年で結婚することないじゃないかって感じ。

もういっそのこと、恋愛部分だけ切り取った映画の方がよかったんじゃないかと思います。
ストイックに堀越二郎だけの映画を作ったらよかったんじゃないかと。
あれもこれもそれもって欲張りすぎではないかとね。

クリエイターとしての私はこの物語を肯定しますが、女としての私はこの物語を否定します。

もうちょっと菜穂子に救いがあってよかった。
でも、相手があの二郎である限り、菜穂子はひとり療養所で死ぬんだと思います。

シベリアを子供に差し出すシーンと、菜穂子に対する態度は似ている気がします。
本庄や黒川さんが言ったように、それは「エゴイズム」なんだと思います。

二郎のエゴで菜穂子が死ぬ。
ああ、ままならないな。


ここからは「腐女子として」の感想ですので、下ネタ・ホモネタ何でもござれです。
了承いただける方のみお読みください。



【腐女子として】


ホモホモしいとのネット評判を見て、行く気になったんですが、思った以上にホモホモしかった。

というより、何故男女間の恋愛要素を混ぜたか疑問なレベルだった。

本庄はライバル系ホモだし、黒川さんは上下関係ホモだし、カプローニは先生と生徒ホモだよ。
何この大収穫って思いましたね。

特に本庄との関係はよかったですね。
飛行機の金具を見るために梯子に上ったときとか、きゃーとか言いたかった。
ナチュラルに腰を抱き、抱かれる関係とか、なにそれ滾る。

あと、ドイツだったかな、留学時のたばこのあれとか。
本庄と同じベットとか。ツインはとれなかったのかとらなかったのか。
妄想に妄想が膨らんでやばい。

何故彼は後半あまり出てこなかったのか。悲しい。

黒川さんは才能ある二郎に面白くない気持ちはありつつも、二郎のことを認めていて、あーもうツンデレ。
結婚しようとしたときも何だかんだ協力してあげるんだから。かわいい。

カプローニにあんまり萌えポイントはなかった気がするんですが、行動がいちいちキュートだった。
最後ワインを飲もうって言ってて、上機嫌なおじさんかわいい。

とてつもなく余談ですが、二郎はセックスが下手そうです。
ひとりよがりのセックスをしそうな眼鏡だなとずっと思ってました。

菜穂子はおそらく主張しないで痛みに耐える派でしょうが、
本庄は痛いとか下手くそとか言うタイプだと断定します。

本庄は受け受けしくも攻め攻めしくも見えるのですが、二郎はひたすら鬼畜攻めだと思ってます。
黒川さんは圧倒的受けオーラーが出ててかわいい。
カプローニは状況に応じてって感じで楽しいですね(私だけ)。

もう何をしてもホモにしか見えない。
ホモ映画としてみればとても楽しく、作中それだけが救いでした。

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と、これでしめるのもどうかと思いましたので結びを。

色々な場所で言及されていた主演の庵野さんの声ですが、私はあっていると思いましたね。
感情のふり幅の小さい二郎らしい声が出せていてぴったりかな。

あと、関東大震災の描写。土が盛り上がるところとか怖かった。
やっぱり映像は美しく、どれだけストーリーに疑問を持っても、良いものでした。

感動して涙するような作品ではありませんでした。
すべてが淡々と始まり、淡々と終わる。
子供に理解できないのは当然かもしれない。

薦める人を選ぶ作品であったと思います。